刀　白鞘入り
Katana, Shirasaya

【銘文】表 : 安政六未年十一月百不知老人久幸(以下切) 裏 : 吹毛匣裏冷光寒外道天魔(以下切)

【寸法】刃長 69.0cm(2尺2寸7分7厘)、反り 1.6cm(5分2厘)、元幅 3.34cm、元重ね 0.84cm、先幅 2.76cm、先重ね 0.57cm、目釘孔 2個、刀身重量 984g 、白鞘全長 98.7cm

【時代】江戸時代末期　安政六年(1859)

【国】武蔵

【特徴】鎬造、身幅広く重ね厚く、中程より上は冠落とし風に鎬の棟際を削ぎ、反り頃合いにつき、元先にさほど幅差つかず、大切先となる姿。

茎は磨上、鑢目(旧)筋違に化粧鑢(新)切り、先入山形、目釘孔二。

地鉄は、小板目肌、小杢目交じり、地沸つく。

刃文は、互の目乱れ、足入り、沸よくつき、金筋・砂流しかかる。

帽子は、乱れ込み、小丸に返り、先掃きかける。

【見どころ】川井久幸は川井亀太郎といい、徳川幕府に仕えた武士で剣術と学問に優れ、細川正義門において鍛刀を学び、江戸時代末から明治初年頃にかけ江戸・小石川で作刀しました。「藤原久幸造之」 「藤原久幸作之」 「江戸小石川常省子川井久幸武陽江戸川」 「藤原久幸行年六十九歳作刀」(嘉永七) 「久幸七十一歳作」(安政三) 「幕府士川井久幸七十二歳」(安政四) 「幕府士川井久幸七十二歳」 「幕府臣川井久幸七十四歳作」等と銘をきります。年紀作は銘鑑によると、文政四、天保七・十二、弘化二、嘉永二・七、安政元・三・四・五・六、万延元・二、文久元・二・三、慶應三、明治二などがあります。本作は、磨上ながら反り頃合いにつく大切先の豪壮な体配で、刀身中程から鎬を削いだ造り込みとし手持ちのバランスが考慮されています。小板目に杢交じる鍛えに互の目乱れ、足入り金筋・砂流しかかる刃文で、久幸としては珍しい乱刃です。七十四歳時の作で禅語を用いた長い銘文があります。

【状態】わずかに擦れ・ヒケなどがあります。

【付属品】素銅地銀着一重ハバキ、白鞘、白鞘袋、登録証(鹿児島県8824号 昭和39年4月11日交付)、保存刀剣鑑定書(日本美術刀剣保存協会 令和五年八月二十五日発行)